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ミステリー好き大学教員の気ままなレビュー

とある私立大学のボンクラ大学教員がミステリーのレビューをメインに気ままに思ったことを書きなぐるブログです。

【読書レビュー】柳広司『トーキョー・プリズン』※ネタバレあり

 

トーキョー・プリズン (角川文庫)

トーキョー・プリズン (角川文庫)

 

ミステリーも弱く、すっきりしない読後感

 『トーキョー・プリズン』は、密室殺人のトリックには納得がいかず、またラストもスッキリとしないスパイミステリーだ。これを読むなら以前にも紹介した『ジョーカー・ゲーム』の方が何倍も面白い。

あらすじ

舞台は戦後まもないトーキョー、東京裁判にかけられる日本人戦犯が収容されているスガモプリズン。

 

日本で捕虜となった可能性のある友人を探しにきたニュージーランドの私立探偵・フェアフィールドは、プリズン内での情報収集を認めてもらう条件として、記憶喪失になりながらもプリズン内で発生していたアメリカ兵士密室毒殺事件の捜査に関わっていたキジマの手助けをすることになる。

 

※以下ネタバレ注意

トリックはまさかのオウム

正直に言ってしまえば、密室のトリックは拍子抜けするトリックで「本気か?」と言わざるを得ないようなものだ。

 

なにせ、犯人はあらかじめ被害者が吸う煙草に毒を仕込んでおき、いずれ被害者がそのタバコを吸った後にオウムにその煙草を回収させて証拠を隠滅するというトリックなのだ。小説内では「オウムにそのような訓練を施したのだ」などと言っているが、果たしてそう上手くオウムが行動してくれるか非常に不確定である。

 

犯人は被害者がタバコを吸う場面には同席していない(だから密室殺人になっている)。そのため、犯人は被害者がいつ毒入りタバコを吸ったのかが分からないはずだ。それなのに、その”訓練した”オウムにタバコを回収させるタイミングをどのように知ったのだろうか。疑問は残るばかりである。

 

友人の行方も分からずじまい

また、フェアフィールドが来日した理由である友人の行方についてもすっきりしない。物語のラスト部分でフェアフィールドなりの推理が披露されてはいるものの、ほとんど妄想に近いもので、決して真実だと思えるような内容ではない。そのため、読後も「結局友人ってどうなったの?」と疑問を抱き続けざるを得ない。なんともスッキリしない小説である。

 

人の心理描写やキジマの考え方には感心させられる部分はあった。しかし、全体的にみれば、わざわざ読まなくても良い小説と言ってしまってもいいかもしれない。

 

mysterymania.hatenablog.com