「精神医学は医学の中で最も新たな病気が見つかっている領域だ。」
と言っていた。
確かに、これまで「なんとなく何事にもやる気がでない」がゆえに社会的にダメ人間扱いされてきた人たちが「うつ病」という病であることが認知されるようになることで、社会からの目が優しくなってきた、という貢献点はあると思う。
しかし、それと同時に、彼ら、精神科医は“一般的な人間”から逸脱した性格、特性を次々と“病”というレッテルを貼り、自らの権力領域を拡大させているようにも思える。
この『サイコパスを探せ!』も同様のことを私たちに教えてくれる。
サイコパスの診断がインチキであることを証明しようとした心理学者・ローゼンハンが、サイコパスの振りをするよう頼んだ友人を精神科医のもとへと送りこんだ結果、その多くが見事にサイコパスであると診断されてしまったのである。その上、サイコパスとして診断された後、 精神病院へと運ばれたその友人たちは、サイコパスではない通常の行動をとっていたにもかかわらず、退院まで19日もかかってしまったのである。
精神科医たちは、サイコパスではない通常の行動をとっている患者を、「彼(彼女)は退院するために、ずる賢くも通常の人と同じ行動をとっている」とみなしてしまう。当然、サイコパス的な行動を取っている人はサイコパスとして長く入院生活を送ることになる。もはや、一度サイコパスの診断を受けると八方ふさがりである。
こうした精神科医の全く科学的とは言えない行動を分かりやすい文章で提示してくれているのは本書の見所の一つだと思う。その他にも本書には随所に面白い精神科医やサイコパスの逸話がちりばめられている。
<股間療法>と呼ばれる療法などは電車の中で読んでいたにもかかわらず、思わず吹き出しそうになってしまった。全部で約350Pとやや長めの本だが、内容は難しくないので通勤通学の電車の中でさくっと読める良本だと思う。