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ミステリー好き大学教員の気ままなレビュー

とある私立大学のボンクラ大学教員がミステリーのレビューをメインに気ままに思ったことを書きなぐるブログです。

【映画レビュー】 ザ・ファーム/法律事務所 (字幕版)※ネタバレあり

 

 ジョン・グレシャム原作の小説を映画化した本作は、悪徳弁護士が経営者となっている法律事務所を法に則って正々堂々と成敗する爽快感抜群の良作だ。

 主人公のミッチ・マクディーア(トム・クルーズ)は、ハーバードのロースクールを上位5番以内という極めて優れた成績で卒業し、大都会にある大手企業や議員などが顧客の一流法律事務所からいきなり年棒6万8000ドル(日本円にして1000万円以上)の提示を受けるなど、引く手あまたの状態だった。

 

そんな中、テネシー州メンフィスという田舎の法律事務所から年棒8万ドルに加え、低金利での住宅ローンや好きな自動車といったオプション付きという破格の条件の提示を受けたため、大喜びでその法律事務所への就職を決定する*1

 

ところが、その法律事務所では、若手の弁護士が相次いで死んでいたりと不審な点が次第に明らかになる…

 

※以下ネタバレ注意

以前紹介したリンカーン弁護士では依頼人から脅されるという形だったけれど、今回のザ・ファームでは所属事務所から主人公が脅されるというパターンだ。

 

しかも、そのやり口が相手も弁護士なだけあって極めて巧妙だ。

 

金利での住宅ローンを与え、家を買わせ、生活を安定させることで子どもを早く生ませる。

 

そして、その子どもが育ち、養育費がかかってくるため仕事を辞められなくなったタイミングで、その弁護士事務所の裏の顔であるマフィアのマネーロンダリング資金洗浄)の仕事をするよう求めるのだ*2

 

そして、それを断ればその弁護士には死が待っている。

 

トム・クルーズ演じるミッチは、FBI捜査官から事務所の裏の顔を伝えられ、事務所を摘発するために内部資料をこっそりと持ち出すよう求められる。

 

しかし、弁護士には守秘義務がある。そのため、顧客のデータをFBIに提出すれば、せっかく苦労して手にした弁護士資格がパーになってしまう。かといって、FBIへの捜査協力を断れば、悪の道に染まるか、FBIの摘発によって刑務所にぶち込まれてしまうことになる。

 

いわば、ミッチはどちらの道に進んでも茨の道が待っているのである。

 

このジレンマを解消を見事に解消し、弁護士事務所をつぶしてもバックにいるギャングにも命を狙われなくなるような起死回生の一手をミッチが最後に打つ。

 

法律のことは詳しくは分からないが、やはりこの一手の鮮やかさに感動する他なく、思わず「よくやったミッチ!」と心の中で思ってしまったほどだ。

 

以前紹介したリンカーン弁護士にも言えることだけど、こうしたジレンマを合法的に見事に解決していく所がリーガルサスペンスの面白さの一つかもしれない。

 

ただ、そのミッチの起死回生の一手となる「郵便詐欺」なるものがなぜ重要となるのかは日本にいる僕たちにはどうしても分かりにくい部分がある*3。郵便詐欺についてよく分からなくても話の筋は分かるけれども、知っておいた方が間違いなく映画を楽しむことができただろう。そこだけが、この映画の残念なポイントだ。

 

*1:メンフィスの人口はニューヨークの1/10以下、アメリカ全土で20番目に大きな都市

*2:このあたりは、家を買った途端に地方や海外への出張を命じられる会社員も同じかもしれない…

*3:アメリカで「郵便詐欺」がどんな意味をもつか、なぜこの映画でそれが重要となるのかについては、「ザ・ファーム/法律事務所」における郵便詐欺と連邦の権限で詳しく書かれているので、こちらを参考にしてください。