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ミステリー好き大学教員の気ままなレビュー

とある私立大学のボンクラ大学教員がミステリーのレビューをメインに気ままに思ったことを書きなぐるブログです。

【映画レビュー】セント・オブ・ウーマン 夢の香り (字幕版) ※ネタバレあり

 

高校生と盲目の元軍人の精神的成長を描いたヒューマンドラマ

『セント・オブ・ウーマン 夢の香り (字幕版)』は、細部にまで気を配っている脚本、そしてラスト20分で訪れるフランクのスピーチが最高に素晴らしい現時点で今年ベストなヒューマンドラマだ。

 

あらすじ

感謝祭を目前に控えたある日、ボストンの全寮制名門校・ベアード校に通うチャーリー(クリス・オドネル)は、校長の車にいたずらを仕掛ける級友を目撃する。

 

愛車のジャガーを台無しにされ、怒り狂う校長(ジェームズ・レブホーン)は名門校の名を汚す行為だとして犯人探しに躍起になる。そこで、目撃者の一人であるチャーリーに犯人を正直に話せばハーバード大学への推薦状を書くが、犯人をかばえば退学処分にすると脅しをかけてくるのだ。

 

友人を裏切って自分の将来を確保するべきか、それとも友人を守り、自分の将来を閉ざすか。

 

週明けにはその回答をしなければならないという悩みを抱えるチャーリーだったが、故郷であるオレゴンに帰るための旅費を稼ぐためにアルバイトをすることになっていた。そのアルバイトで、盲目の退役軍人フランク(アル・パチーノ)の世話をすることになる。

 

 ※以下ネタバレ注意

微笑ましい2人の信頼関係の熟成

チャーリーとフランクの2人は出会った当初から気が合っていたわけでは決してない。初対面から下品で毒を吐きまくるフランクにチャーリーはこのアルバイトは僕にはできないと雇い主に一度は訴えかけたほどだ。また、フランク自身もチャーリーに「頭に脳ミソはあるのか?」や「生意気な名門高校生が」、「口答えは許さんぞ」などと散々な言いようだ。

 

しかし、バイト当日になって突然フランクはある計画のためにニューヨークに行くと言い出し、チャーリーを旅行に連れ出す。そうした行動を共にするにつれ次第に信頼感が生まれてくる。その描写が素晴らしい。

 

例えば、盲目のフランクを介助しようとチャーリーがフランクの体を支えようとしても、「俺に触るな!俺がお前に触る!」と大声で怒鳴られるシーンがある。たしかに、盲目の人にとって、突然自分の体に触ってくるものがあれば怖いだろうから、チャーリーが怒鳴られても仕方がないと思ってしまうかもしれない。しかし、物語が進むにつれ、いつしかチャーリーがそっと自分からフランクの体を支えても、フランクは何も言わずにそれを受け入れるようになっているのである。

 

こうしたさりげない2人の行動からも彼らの間に信頼関係が生まれていることが伝わってくる。大人気の海賊漫画のように、状況をモブキャラにいちいち説明させるような野暮なことはせず、さりげない行動で心理を描きだす表現にはやはり感心するほかない。

 

ラストのスピーチは必見レベル

また、このように2人の間に信頼関係が生まれていることを丁寧に描いているからこそ、ラスト20分ほどで行ったフランクのスピーチには心が動かされる。

 

ここは本当にこの映画の見せ場なので詳しくは書かないが、このスピーチからは高校生であるチャーリーの精神的成長だけでなく、フランクも精神的成長を遂げていることが分かる。フランクはかつては優秀な軍人だったが盲目になったことで捨て鉢になっており、それゆえに周囲との軋轢を生み出してしまっていた。しかし、彼もかつての誇りを取り戻し、新たな人生を歩みだそうとしていることがスピーチからは伝わってくる。そのスピーチのすばらしさは電車の中でこの映画を見ていたにもかかわらず、危うく涙をこぼしそうになるほどだ。

 

やや偏屈で介助が必要な老人と、それを手助けする若い男性の交流を描いたヒューマンドラマという構図で言えば、『最強のふたり (字幕版)』と同じような内容だが、個人的にはこの「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」の方が圧倒的に好きであり、おススメできる映画である。