あらすじ
舞台は1979年。
本作の主人公である占星術師・御手洗潔の元に飯田美沙子という女性が訪れる。彼女は、父の遺品を整理していた所、その父が40年前に起きた殺人事件の関係者であることを告白する手記を見つけ、真相を確かめるべく探偵のような才能をもつ御手洗に調査を依頼しにきたという。
その40年前に起きた殺人事件とは、とある画家が密室で殺害された後、その娘たち6人も次々と体の一部を切り取られた姿で日本各地で見つかったという猟奇的殺人事件であった。その娘たちの殺害方法は画家が手記にしたためていた、占星術にしたがって、6人の処女からそれぞれの星座に合わせて身体の一部分を切り取り、それを合成して完璧な女性を作り出すという方法そのものだったのである。
誰が手記に従って殺したのか、また切り取られた肉体はどうなったのか。様々な謎は解かれることなく、占星術殺人事件と名付けられ、迷宮入りとなっていた。
始めは興味を持っていなかった御手洗だが、友人の石岡から占星術殺人事件のあらましを聞き次第に興味を示すようになる…
序盤は極めて退屈、しかしそれを乗り越えれば
物語の始まりは、40年前に殺された画家の手記で始まる。この手記の内容が物語のキーポイントであるのだけれど、これが非常に退屈だ。かつてこの本を何気なく読もうと思って手に取った時は、あまりにもこの導入部分が苦痛すぎて、読むのをあきらめてしまったほどだ。
しかも、その手記が終わり、ようやく御手洗たちが出てきたと思えば、その御手洗も「つまらない文章だ」などとけなしているのである。そ
「登場人物ですらつまらないと言わせてしまうようなものを読者に読ませるなよ」と序盤はイライラが募る。
しかし、そのイライラをなんとかやり過ごせば、あとはぐいぐいと物語に引き込まれる。40年もの間、誰も解けなかった謎の答えは一体どんなものなのか気になって仕方がなくなるのである。
しかも、解決編に入る前には、作者の島田荘司氏から、挑戦状がたたきつけられる。
「すでにトリックを解くカギは全て提示した」と
残念ながら僕は自力で謎を解くことはできなかったのだけれど、そのフェア精神には感心するばかりである。
最近読んだミステリーの中でも間違いなく傑作の部類だと言える。