ミステリー好き大学教員の気ままなレビュー

とある私立大学のボンクラ大学教員がミステリーのレビューをメインに気ままに思ったことを書きなぐるブログです。

【読書レビュー】島田荘司『斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)』

 

改訂完全版 斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)
 

 『斜め屋敷の犯罪 』のあらすじ

北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館――通称「斜め屋敷」。雪降る聖夜にこの奇妙な館でパーティが開かれたが、翌日、密室状態の部屋で招待客の死体が発見された。人々が恐慌を来す中、さらに続く惨劇。御手洗潔は謎をどう解くのか!?

 

 トリックはとんでも系で、犯人もある程度は予想可能。しかし、全体として漂う奇妙な雰囲気がGOOD

この物語のトリックはまさに屋敷が斜めであることにポイントがあり、トリックのネタ晴らしをされれば、その理由もはっきりとわかる。しかし、正直に言えば、最初に読んだ感想は「そんなことありえるのか?」というものだ。御手洗潔シリーズの第一作である『占星術殺人事件』のトリックもかなりトリッキーではあったが、まだ「なるほど」と思わせてくれる部分があった。しかし、本作の『斜め屋敷」では、どうも腑に落ちない。

 

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「わざわざ特定の人を殺すためだけにこんな大がかりな仕掛けを施すかね?」「これだけコストも時間もかけるんだったら、他にやり方はあったんじゃないのか?」と疑問は次々と湧いてくる。

 

しかし、そんなことを言ってしまえば、ほとんどのミステリー小説は個性を無くしてしまうかもしれないので、それは無粋というものなのだろう。

 

また、「犯人はたぶんコイツだろうな」とだいたいの予想はついてしまうのも解決編での爽快感を少なくしてしまっている。

 

ただし、物語中は奇妙なことが立て続けに起こったり、様々な人間模様が展開されたりするので、退屈するということは決してない。御手洗潔シリーズが気になっている人には一読の価値がある本だと思う。